こにちは!士業猫です!
令和5年度論文試験の講評、第3弾!
今回は引き続き意匠法を講評していきます!
それでは一緒に見ていきましょう!
意匠法【問題Ⅰ】
問題Ⅰは国際出願を絡めた事例系の問題でした。
国際出願が苦手な受験生にとっては難しいと感じた部分もあるかと思いますが、そこさえ越えてしまえばあとは素直な一問一等形式の問題ですね。
特許もそうでしたが、今年は他の受験生と差が付かない問題が多いですね…。
受験生にとっては逆に厳しい戦いになりそうです…。
【設問(1)】難易度:易
意に反する公知からの新規性喪失の例外(4条1項)を問う問題。
拒絶の通報後の対応になるため、4条1項を意見書により主張することがポイントになります。
国際登録の日から1週間前にフロアランプを公知にしていますが、新規性の判断はあくまで「出願前」となります。
そのため、国際意匠登録出願の出願時認定についても言及しておく必要があることにも注意が必要です。
この辺りは国際出願ならではですね。今回は差が付きにくい問題なので、こういった丁寧な認定が合否を分けるように思います。
【設問(2)】難易度:易
国際出願で未出題の分野といえば…もうこれしかない…!からの出題。補償金請求権です(60条の12)!
こちらは、国際公表が設けられたからこその導入、といった趣旨まで問われるかと予想していましたが、要件のあてはめだけの出題でしたね。
ここも他の受験生が対策している分、差が付きづらい…。そういった意味でもあてはめはしっかりしておきたいです!
【設問(3)】難易度:易
意匠権の侵害について、輸入の解釈を問う問題でした。
こちらも全予備校が予想したであろう問題…令和3年改正です!
意匠か商標のどちらで出題されるかというところでしたが、これは絶対でる問でしたね。
ポイントは、実施の輸入には、外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為を含む点をあてはめられるかというところになるかと思います。
この辺りも、多くの受験生が準備しているところでしたので差がつきづらい…。
簡単であるがゆえに…相対評価の論文試験では受験性泣かせの問題ですね…。
意匠法【問題Ⅱ】
権利化後の事例系の問題かな…?と思いきや知識系の問題。
令和元年改正で導入されてからやっと建築物の意匠について出題されましたね。
【設問(1)】難易度:普
建築物の意匠の導入趣旨、及び工業上利用可能性についての出題でした。
建築物の趣旨については、例年出題が予想されているところでしたので、多くの受験生が準備してきていたと思います。
ここの記載は必須ですね。ポイントとしては、空間デザインによるブランド価値の形成、デザイン投資の収縮の防止、といったところになるかと思います。
一方で工業上利用可能性。
ここは受験生の虚を突いた出題でしたね。困った受験生も多かったのではないかと思います。
工業上利用可能性の詳細な要件は意匠審査基準を参照です。
ただ工業上利用可能性の判断基準が「量産性」にあることに着目し、建築物も量産できるという論調で切り抜けることはできたかなと思います。
おそらく量産性に触れられていれば、他の受験生との差はつかないものと考えられます。
【設問(2)】難易度:易
先使用権の「事業の準備」の解釈を問う問題。ウォーキングビーム式加熱炉事件ですね。
…なのですが、「事業の準備」の定義がすでに問題文中に…!
せっかく暗記してきた受験生にとってはガッカリな…出題です…。
ここでは事業の準備の定義を、
①即時実施の意図を有していること(主観的側面)、
②その即時実施の意図が客観的に認識される態様、程度において表明されていること(客観的側面)
に分け、それぞれを問題文の事例に当てはめることがポイントになります。
建築物の場合における「事業の準備」の解釈の幅を論じるというよりは、
丁寧な当てはめが点数の差になってくるかなと思います。
まとめ
今年の意匠法の難易度は…特許と同様、国際出願アレルギーさえなければ簡単…といえそうです。
こういった出題のときは、記載時間に余裕のある意匠では、論点がすべて記載できたかよりも、当てはめをいかに事例に即した検討ができたかが合否を分けることになりそうです。
また、全体として令和元年以降の改正を意識した出題が目立ちました。
今後も令和元年以降の改正点には注意が必要になると思います!
それでは次回は最後の商標法を講評していきます!士業猫でした!