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令和5年度論文式試験 特許問題Ⅱの講評

こにちは!士業猫です!
令和5年度論文試験の講評、第2弾です!

今日は特許法の問題Ⅱを講評していきます!
それでは一緒に見ていきましょう!

特許法【問題Ⅱ】

問題は設問1+設問2(1)(2)(3)+設問3の5問構成。設問1が実質3項目問われていることを考えると、連年よりも若干問題数多めの出題といったところ。

ただ、問題自体は全体的に漂う過去問の焼き増し感…。
なので、あとは時間との闘いだったのかな…?

良問なんだけど…問題数を増やすと一問一答の知識系の問題になってしまうのよね…。
問題作成者のジレンマやよね…。

それでは、具体的な内容を見ていきましょう!

令和5年度の問題は、以下の特許庁のホームページからご参照いただけます。
 https://www.jpo.go.jp/news/benrishi/shiken-mondai/2023ronbun-hissu.html

【設問1】難易度:易

いわゆる侵害系の問題。
乙の行為1~3の各行為が、甲の特許権Pの侵害に該当するかを認定しましょう。

行為1は、形式的には甲の特許権Pを侵害します(68条)。
しかしながら、行為1は技術的効果を確認・評価するための実験なので、69条1項の「試験・研究」に該当し、特許権Pの効力が及びません。

まずはジャブ。69条1項のあてはめを問う問題でした。

試験・研究の解釈には染野説がありますが、こちらは加点要素になるかと思います。
69条1項のとおりに検討できていればひとまずは合格ラインに乗れそうです。

行為2は、判例を問う問題。膵臓疾患治療剤事件ですね。

69条1項の試験の解釈を問う問題です。
ポイントは「承認申請のための試験」も69条1項の試験に含まれる点。
条文にないところなので、解釈の理由付けにまで言及しておきたいです。

こちらも受験生必携の判例ですので、本試では落としたくないところ。

行為3は、なにか知らない解釈があるのでは…?と不安になるところですが、

どストレートに侵害です(68条)!

その製造が販売目的でされているのであれば、問答無用で業としての実施で侵害!となります。

急に直球でこられると却って不安になる現象…本試に魔が潜むとはまさにこのこと…。
ただ問われていること自体は基本事項…落とせません!

【設問2(1)】難易度:普

平成28年度のリメイク。プロダクトバイプロセスクレームです!
判例事項で、プラバスタチンナトリウム事件ですね。

私個人の読みでは、拒絶理由対応としてのプロダクトバイプロセスクレーム(不明確性とその解消)が出題されると予想していましたが…またしても効力範囲についての出題でした…無念!

問題自体は知っていれば簡単なのですが、問われ方が少し難しかったですね。
本試の緊張から、生産方法の推定(104条)に思いを馳せてしまった人もちらほら…。
ただ、「効力が及ぶか」について問われていることに着目して正解にたどり着きたいところではあります…。

【設問2(2)】難易度:易

共有に係る特許権の単独行使の可否が問われた問題。王道ですね。
今回は差止請求についてでした。

「自己の持分権に基づく保存行為として単独で請求可能」であることを記載しておきましょう。

ここは絶対落とせません!

【設問2(3)】難易度:易

こちらも王道!共有に係る特許権の実施許諾の可否です。
実施権の設定許諾には、他者の同意が必要ですね(73条)!
理由付けも王道!資本及び技術如何によって他の共有者の権利が有名無実!

ここも絶対落としたくない!

ちなみにどーでもいいかもですが、この設問2(2)(3)の問のラインは個人的には大好き。
甲と丙のスタンスの違いを問題につなげるとは…作成者のセンスを感じます!
私も勉強させていただいた巧の技…参考にさせていただきますよ!

【設問3】難易度:普

侵害訴訟の判決確定後の再審の訴えの可否が問われた問題。直近だと平成27年度のリメイクですね。
素直に104条の4第2号をあてはめればOK。この辺りは苦手な受験生も一定数いるかもしれません。
ただ条文さえ特定できればあとは差がつかないように思います。

ここでは問われ方が「論ぜよ」なので、条文の趣旨まで記載が要求されているのか判断が難しいところ。
出題者の意図は趣旨まで要求していたようにも思いますが…すでに条文に記載されている事項は、要件を満たせば論じるまでもなく適法なので悩ましいところ。
出題者の意図はともかく、試験自体は相対評価なので、趣旨まで記載しなくても要件の検討がしっかりされていれば大きな差にはなっていないように思います。

まとめ

以上、特許法【問題Ⅱ】でした!

問題数が多かった分、基本問題の詰め合わせといった内容でした。
これだと他の受験生がほとんど記載してくるので、差を付けるのが難しいように思います。
今後もこの傾向が続くとなると、結論よりも要件・効果のあてはめで合否が分かれてきそうですね。

基本を確実に、正確にが来年以降も大切になりそうです。

それでは次回は意匠法を講評していきます!士業猫でした!